2009年05月10日

沖縄編パート1 最後に

これから沖縄パート2に入って行きますが、自分で読み直してみて、勝手に熱くなったりしてます 笑
録音現場の描写は、音の表現を日本語で表す言葉があまりにも貧困すぎる物しかなく、使えませんでした。
日本語の限界を感じました。
したがって、マルチレコーダーの走行音のシューだけです。・・・笑
ジァンジァンの高嶋社長と会うのはこれよりずっと後ですが、この時現場に居たのかと、元ジァンジァンの友人に聞いたところ、、単パン、Tシャツ、ゴム草履姿(この人のトレードマーク)で酒を片手に、客席でスタッフに非難されながら聞いていたそうです。
(酒持ち込むなよなぁ〜!気持ちは判る。俺もそうしたい)・・・笑
沖縄での熱い録音現場は以上です。
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沖縄編 その十六

粟圀さんの左手が挙がった。
顔はすごいスピードで左右を見回している。
左手を、めいっぱいに開き、指を折りだした。
最後の4小節の合図だ。
四つになった!
三つになった!
二つになった!
身体を大きく曲げ飛び上がって素早く両手を振り下ろした。
演奏が終わった。

演奏の残響がまだ残る中、ブラヴォー!の大歓声と凄まじい拍手が巻き起こった。
私はやっと椅子に座り、ミキサー卓の縁に肘をつき、両手で頬杖をついている。
息をするのを忘れていたのを思い出したように、大きく息を吸い込み、吐き出すと、後ろを振り向いた。
ディレクターが、眉間に皺を寄せ、分厚いスコアーを空中に放り上げた。調整室の中をすごい数のスコアーが舞っている。
彼の考えはすぐ理解できた。
致命的な演奏ミスが多いのである。
ライブでは、視覚的な要素と音量の大きさで許せても、レコードは別である。レコードを、ライブと同様の音量で聞く人はいないし、演奏風景は見えないのだ。
しかし、私には「録れた」という自信があった。
にっこり笑って彼に言った。
「俺に三日くれる?作品に仕上げてみせるから」《三日間とは、トラックダウンの部屋を三日間押さえてくれと言う意味だ》
稿をも縋る気持ちであったろう彼は、「判った」と一声残し、赤電話のところへ飛んで行った。
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沖縄編 その十五

粟圀さんのコンダクトが、さらに激しく大きくなった。
バンドとシンフォニーが激突するクライマックスへの合図である。
ディレクターの声も、途切れ途切れにしか聞こえない。
もうここまでくると、私もあとの二人の頭の中も、沸点を通り越して、演奏の激流のなかを楽しみながら漂っている。
声を出すのも面倒だ。
指示など出さなくても、勝手に向こう岸に泳ぎ着くだろう。
バンドの演奏に、シンフォニーが大波のようにかぶさって激突した。
【モニターボリュームを下げる気はさらさらない。きっとアンプは悲鳴を挙げているだろう 「頼むぞ!最後までもってくれ〜!!」おわったら火を吹いてもかまわない・・笑】
演奏は、二つの巨大な龍が、のた打ち絡み合い、凄まじいカオス状態だ。
粟圀さんも、さらにエキセントリックなコンダクトになっている
【演奏者全員を着地点に導くために頭の中は噴火しているだろう】
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沖縄編 その十四

ベトナム帰りの米兵の前で培った演奏は、すさまじい迫力とビート感を目の前に展開した。
【後日聞いた話では、いつ又ベトナムへ戻りいつ死ぬか判らぬという極限状態の恐怖感から、深酒とドラッグに溺れ、異様に研ぎ澄まされた感覚の米兵の前で演奏していたのである。ノリの悪さや演奏ミスに対してはコルトやカービン銃をぶっ放し、ビールビンが飛んでいたという】
ジョージのソロも、ギターのソロも、異様な熱気を孕み、矢継ぎ早にとんでもないフレーズが飛び出してくる。
調整室からは判らないが、客もかなり盛り上がっているのだろう。
いきなり、私の真後ろからスピーカーの音量に負けない声で「いくよー!!」と声がかかり、ギョッ!として飛び上がった。
ディレクターが、大音量ではまりこんで録音している私に判るように、気を利かせてすぐそばまできていたのである。
無言で所定の位置についた関口と佐藤に目で合図を送ると、無言で軽く頷いた。
「いくぜ!」と私。
「ワンッ!」「ツゥッ!」「スリーッ!」「フォッ!」「イケーッ!(私)」
オケのほうも、ブラスが鳴り響き、フォルテシモで対抗し、荒れ狂っている。
《譜面を並べた音楽的な説明よりこっちのほうがぴったりである》
《新旧沖縄の対決に聞こえる》
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沖縄編 その十三

本土のバンドの演奏とは違うと皆感じているようだ。
アシスタントの一人も、レコーディングシートを書き込みながら盛んに頭と身体を揺すりリズムをとっている。いい傾向だ。
やがて、またバンドからオーケストラに演奏が移っていった。
軍靴の響きを思わせる行進の音、コーラスが歌う
♪あめおろちたもれ あめおろちたもれ♪
続く日照りに天を仰ぐ民衆の祈り。
様々なことを演奏の中に連想しながら、レコーディングは進んでいく。
調整室の中は、スピーカーから流れるライブの音以外は、マルチテープが走行するシューという音だけで、しわぶきひとつ聞こえない。
演奏は進行し、除々に最終章へ入っていった。
再び後方のディレクターから声がかかった。
関口と佐藤が静かに所定の場所についた。
「四つ前ッ!」【*注・・四小節前】ガナリ声が飛ぶ。
「ワン!ツゥ!スリィ!フォ!」
三十本の指が一斉に動く。
クライマックスへ向かってハンド演奏が始まった。
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沖縄編 その十二

夕食も終わり、本番まであと四十分程である。
那覇市民会館の前には、すでにかなりの人が並んでいる。(ライブ録音は拍手の音も重要だ。熱気のある拍手がとれそうだ。)
調整室に戻り、また「檻のなかの熊」状態に戻る。
ライブ録音は何度やっても、始まってしまえば何ともないのだが、始まる一瞬前までは異常に緊張するものだ。
演ずるアーティストも同じだろう。
インカムでステージスタッフから2ベルが入る旨連絡がある。
マルチレコーダーが回り始めた。コンサートがスタートした。
平良トミさんの語りが始まった。
リハとは比較にならないほど迫力がある。
フェーダに乗せた指先から腕を伝って身体まで鳥肌が立つ。【以前録音した俳優の藤竜也さんのアルバムナレーションの感動とは別種のものだ】
きっと沖縄の歴史と生活の重みがあるのだろう。
沖縄音階を含めたクラシックの演奏は、独特の空間を作り出している。
一瞬「あぁ俺は沖縄にいるんだな」と感傷に浸っていると、後ろから「そろそろいくよ〜!」と大きな声が飛んできた。
四小節前にはまだ間があるが、気を効かせて教えてくれた。関口と佐藤が所定の位置についた。バンドの演奏は前半の演奏はピアニシモで始まるので、フェーダをゆっくり下ろすように指示した。
ジョージの演奏が始まった。
三十本の指でゆっくりとフェーダを下ろした。バンド全員の演奏が始まる。
観客を前にしているせいか、リハよりさらにノリがいい。演奏に浸りついついモニターボリュームが上がっていく。
しかし調整室の中はスタッフ全員身体を揺すり、足でリズムをとって盛り上がっている。
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沖縄編 その十一

わざと真面目な顔を装って調整室に戻ると、衛藤ディレクターが笑っている。オケピットにおける関口との内緒話がみんな聞こえていたという。「しまった!オケピットのマイクもモニターのボリュームも上げっ放しだった。」
【標語一題・・・マイクの前の内緒話はやめましょう。。。松】
衛藤氏曰く「それじゃぁ俺もステージのチェックに行かなきゃだめだな」
「そうだよ!ライブは何が起こるかワカランからチェックは必要だ」と私。《音楽にはこれくらいの柔軟性が必要だ・・・言い訳》
後半の演奏が始まった。
粟圀さんと上地さんが、休憩時間のほとんどを使って直しを行なって、音にまとまりが出来てきた。バンドの演奏もオケの方から苦情が出たようで(当たり前か)ボリュームが落ちていたが、ミキサー卓のフェーダは敢えてそのままにしておいた。
ミュージシャンはノッテくると必ずボリュームがあがることを何回も体験しているのだ (これは本番で的中する。観客を前にするとアーティストはテンションが上がるものだ)
通しリハが終わり、部分直しのため上地さんの声が飛んでいた。
全体の行き方がわかり(前回のゲネプロは聞けなかったため初めて全体像が見えたのだ)私は急に空腹を覚え、ディレクターに頼んで、本番までの食事休憩を頼んだ。
昔からヤセノ大食いの上に音の前にいると動き回らなくてもやたらと腹が空くのである。
外の食堂へ行きゴーヤチャンプルー定食とソウキそばを頼んだ。
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沖縄編 その十

前半のバンド演奏が終り、再びクラシックパートの演奏が始まった。
一旦、機材保護のために下げた全フェーダの位置に印をつけ、再びシンフォニーパート、合唱パートのバランスをとりなおし、印を付けた。この後の本番の時、どういうふうにやっていくかを話すために、後ろを振り向いてディレクターを見た。彼はシンフォニーの演奏ミスやバンドとの音量差をどうしたら好いかわからず、困り切った顔で私に視線を向けた。しかし、あくまでもリハーサルだ。演奏ミスは本番でどうなるかわからない。(今悩んでもしょうがない)とにかく本番を録音するしかない。
それよりもバンドとシンフォニーの音量差をどのようにして録音するかが問題である。
私はディレクターにスコアーを追ってもらい、バンド演奏が始まる四小節前に合図をしてもらい、一小節前から大声で一拍づつカウントしてほしい、また、バンド演奏が終るときも同様にやってほしい旨伝えた。
次に、関口と佐藤を呼び、ディレクターの掛け声で私と一緒にフェーダの上げ下げをやるように指示し、受け持ちの場所を指定した。三十本の指でやるのである。二回の動作で九十本のマイクを操作できる。後の細かなレベル調整はミックスダウンでやるつもりだ。
小休止を挟み後半に入るが、この間にストリングスパートにコンタクトマイクをつけ、ポータブルミキサーで音をまとめて調整室に送るよう関口に指示。
後半の演奏中にバランスと音決めをやり直すためだ。
関口とターザンが機材を持って調整室を飛び出した。
しかし関口だけがすぐに戻ってきた。
忘れ物かと思っていると私に近づき耳打ちした。
「超ミニスカートのかわいいおねぇちゃんがオケピットでバイオリン弾いてますぜ!」「そうか」と頷き私は調整室を飛び出した。《何をやってんだかぁ》
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沖縄編 その九

バンドのパート演奏が始まった。
最初はジョージのソロである。
静かに、雄大に、いかにも沖縄の海を連想させる。
その中に私は浸っていたが、いきなりフォルテシモに転じ、バンド全員の演奏が始まった。
途端に調整室はパニックに陥った。24個のメーターの針が、振り切れ、右側にめり込み、痙攣を起こしている。
ミキサー卓のマイクラインごとについているオーバーロードの赤いランプが、つきっぱなしか、もしくは、すごい勢いで点滅している。すさまじい音量のレベル差だ。
スタッフ全員が私の方を見ている。
こういう場合、どういう訳か《私はニャッと笑ってしまう。こういうシチュエーションが好きなのかもしれない。我ながら、変な奴である》
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posted by アナログオヤジ at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

沖縄編 その八

考えてもしょうがないので、通しリハが始まる前に、バンドの各楽器の音をもらい音決めを行なった。
ジョージ氏のキーボード類がオーバーハイム一台だけだったのは録音する側は助かった。
シンフォニー、合唱は通しリハの中で決めていくことにした。
さあ通しリハの始まりである。
後ろに座るディレクターの衛藤氏に、スコアーを追ってもらい、でてくる楽器を、でてくる少し前に後ろから怒鳴って教えてくれるよう依頼。
何かあったらすぐ飛び出せるよう、スタッフも緊張の面持ちでスタンバっている。ステージ側には二名いるはずだ。
音楽が静かにスタートした。
平良トミさん(琉球演劇の俳優さんである)が語りだした。
沖縄方言で意味は所々しかわからない。しかし、語り口の素晴らしさに鳥肌が立ってきて、その世界に入り込んでいった。《この時から私はすっかりトミさんのファンになり、東京で公演があるたびに花束を持ってみに行くようになった》
この後、徐々に出てくるシンフォニーのバランスと音を決めていった。微妙なマイクのリセットは、後で自分でやるつもりであるが、大まかなマイクの位置移動や、マイクの変更をスタッフに矢継ぎ早に伝え、ステージに走らせる。
100本以上のマイクがつながったミキサー卓は、私をぐるりと取り囲んでいる。
椅子になんか座っていられない。
posted by アナログオヤジ at 18:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記